大阪高等裁判所 平成11年(ネ)3449号 判決 2000年8月29日
東京都中央区<以下省略>
控訴人・附帯被控訴人
東京三菱パーソナル証券株式会社
(以下単に「控訴人」という)
右代表者代表取締役
A
大阪市<以下省略>
控訴人・附帯被控訴人
Y1
(以下単に「控訴人」という)
控訴人ら訴訟代理人弁護士
松下照雄
同
本杉明義
同
宮崎拓哉
京都府<以下省略>
被控訴人・附帯控訴人
X
(以下単に「被控訴人」という)
右訴訟代理人弁護士
杉島元
同
木内哲郎
主文
一 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 控訴人ら
(控訴事件)
1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
(附帯控訴事件)
1 本件附帯控訴を棄却する。
2 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
(控訴事件)
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
(附帯控訴事件)
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金一二一六万二七三九円及びこれに対する控訴人東京三菱パーソナル証券株式会社については平成九年一〇月二八日から、控訴人Y1については同月二四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人らの負担とする。
第二事案の概要
原判決記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決四頁二行目「三ないし五」を「三ないし七」と、同頁一〇行目「原告を担当者」を「被控訴人が控訴人会社の京都支店で行う取引を担当」と、同頁一一行目「勧誘(以下「本件投資勧誘」という)」を「本件投資勧誘」と各訂正し、一〇頁九行目「証券取引法」の次に「(平成九年法律一〇二号による改正前のもの。以下同じ。また、以下の記述中の省令も、本件オプション取引がなされた当時のものである。)」を、同頁一一行目「準則」の次に「等」を各付加し、同頁末行「外国証券市場先物取引」を「外国市場証券先物取引」と、一一頁一行目「状況」を「財産の状況」と、同頁二行目「欠けることになっており、また欠ける恐れがある場合」を「欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがある場合」と各訂正し、一三頁二行目末尾に「。」を付加し、同頁三行目「②」を「③」と、同頁八行目「翌日」を「翌日以後の日」と、同頁一〇行目「被告」を「控訴人ら」と、一五頁五行目「証券口座」を「証券取引口座」と、一八頁一二行目「本件取引」を「本件オプション取引」と、二一頁三行目「被告」を「控訴人会社」と各訂正する。)。
一 控訴人らの主張
1 適合性原則違反について
オプション取引における投資判断について、多くの個人投資家が行っている「現在の日経平均株価が権利行使日までにどのように動くのか」又は「現在の日経平均株価が権利行使日までに権利行使価額を上回るのか或いは下回るのか」という素人判断手法も当然に合理性を有しているから、機関投資家の投資手法と比較して投資判断の困難性を論じるのは誤りである。
2 説明義務違反について
被控訴人に対してオプション取引の勧誘と説明が行われたのは被控訴人が日本債券ベア型オープンによる含み損の発生に激怒していた頃であり、被控訴人は勧誘されたオプション取引の仕組みや危険性に関して敏感になっていたことが明かであり、被控訴人が控訴人Y1やBの説明を理解しないままにオプション取引を開始したことはあり得ない。
控訴人Y1やBの説明は、簡明かつ平易なものでオプション取引を理解するのに充分なものであった。Bの説明は、株価チャート等を利用しながら損益分岐に関する説明をビジュアル面からも分かり易く行ったものであり、オプションの売方に関する最大リスクの説明場面に際しては具体的に保険契約の例まで出していたものであった。それにもかかわらず被控訴人が右説明を殆ど理解していなかったことはあり得ない。
Bがロールオーバーの手法を被控訴人に提案したのは、平成九年一月限月の取引について損失発生となる見込みを伝えた際に、被控訴人から「とにかく損金を支払うのは困る。日本債権ベア型オープンの損失を取り返すためにオプション取引をやっているのに、また損金を支払うのは困る。何とかならないの」という代替案提示の要請があったため、これに応じたものであり、被控訴人とBが協議を行った結果にほかならない。
3 被控訴人の主張は争う。
二 被控訴人の主張
原判決は、オプション取引の危険性、一般投資家に対する不適合性を判断しているものの、被控訴人の過失割合を大きく評価しすぎている。そもそも、本件取引の危険性、欺瞞性、賭博性からすれば、本件において過失相殺を行うのは相当でない。
第三証拠
本件記録中の証拠関係目録記載のとおりである。
第四判断
一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は原判決認容の限度で理由があるから認容し、その余は理由がなく失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正するほか、原判決「第三 当裁判所の判断」説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二三頁九行目「C」を「C1」と、二四頁八行目「どんなことをやって」を「どんなので」と、二五頁二行目「B(以下「B」という)」を「B」と各訂正する。
2 三〇頁七行目「売りる」を「売る」と、同頁一二行目と三一頁一行目の「プット」をいずれも「コール」と、同頁四行目の「12」を「13」と、三四頁末行「リバレッジ」を「レバレッジ」と各訂正する。
3 四〇頁六行目「九日」を「七日」と、同頁一一行目「三四銭」を「三五銭」と、同頁一二行目「金一〇〇〇万円を超える」を「約四二八万円余の」と、四二頁二行目「実体」を「実態」と、同頁六行目「係わらず」を「拘わらず」と各訂正する。
4 四三頁一〇行目「恐れ」を「おそれ」と訂正し、同頁一一行目「準則」の次に「等」を付加し、同頁末行「外国証券市場」を「外国市場証券」と、四四頁一行目「状況」を「財産の状況」と、同頁二行目「欠けることになっており、また欠ける恐れ」を「欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれ」と各訂正する。
5 四五頁七行目「同B」を「B」と、同頁九行目「オプション取引設定口座」を「オプション取引口座」と、四六頁二行目「これが」を「これは」と各訂正し、四七頁三行目「以後、」の次に「それまでの損害の回復を図ろうとして従前同様」を付加し、四九頁二行目「送達されて」を「送達された」と訂正する。
二 結論
右の次第で、原判決は相当であり、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 妹尾圭策 裁判官 渡邊雅文 裁判官 菊池徹)